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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)6209号 判決 1953年9月25日

主文

原判決中判示第二の事実に関する部分を破棄する。

被告人を原判決判示第二の(二)外国人登録令違反の事実につき懲役二月に処する。

原判決判示第一の事実に関する被告人の上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

東京高等検察庁検事長花井忠の上告趣意第一、二点、弁護人片山繁男の上告趣意第一、二点及び被告人の上告趣意第二段について。

甲府地方検察庁検事天野三三の昭和二七年二月一四日附控訴申立書(記録三八三丁)によれば、同検事は甲府地方裁判所が昭和二七年二月二日被告人に対し言渡した判決中無罪部分(昭和二四年六月二八日公判請求の窃盗、予備的に賍物寄蔵又は同運搬並びに同二六年一〇月八日公判請求の事実中外国人登録令違反の点)のみについて控訴の申立をしたことが明らかである。そして、この第一審判決中有罪部分(昭和二六年一〇月八日公判請求の事実中窃盗の点)については被告人より控訴の申立があった形跡は認められない。しかるに、原判決は第一審判決が無罪とした部分のみならず、有罪とした部分についても審判をしている。したがって、原判決には、何等控訴がなく、原審に係属していない事件について審判をした違法があることは洵に所論のとおりである。そして、この違法は判決に影響があり、原判決はこれを破棄しなければ著しく正義に反するものというべきである。したがって、原判決中判示第二の事実に関する部分は、進んで違憲の論旨につき判断を与えるまでもなく、刑訴四一一条一号により破棄を免れない。

被告人の上告趣意第一段及び第三段について。

所論は事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって、刑訴四一四条三九六条に則り、原判決判示第一の事実に関する被告人の上告はこれを棄却し、同四一三条但書により、その余の事実(但し、原判示第二の(一)の窃盗の事実については、検察官は固より被告人よりの控訴もないこと前記のとおりであるから、この部分は除く)について当裁判所において自ら判決をすることとし、原判決判示第二の(二)の事実を法律に照らすと、被告人の同所為は外国人登録法附則三項外国人登録令四条一項一三条一項罰金等臨時措置法二条に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内で被告人を懲役二月に処し、当審における訴訟費用は刑訴一八一条により被告人をしてこれを負担せしむべきものとする。

よって主文のとおり判決する。

右は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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